圧倒的な供給過多の時代、売るスキルも重要ではあるが、これからは社会全体のことを考えたソーシャルビジネスが重要視されていくと言われています。
今回はそれについてお伝えしていきます。
ソーシャルビジネスとは?
ソーシャルビジネスという言葉は、「社会的課題の解決を目指す事業」という意味で使われます。
低利融資を通じて貧困層の自立を支援し、ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行が典型例とされています。
この背景には、行政が何でも解決してくれるというモデルが崩壊しつつあること。
供給過多の時代であり、地球の資源にはやはり限りがあること。
他にもいろんな理由があるかと思います。
社会的課題(地域活性化・少子高齢化・生涯学習など)への取り組みを利益の出る事業活動として実行し、地域の発展、雇用創出につながる活動として注目を浴びています。
利益さえ出していれば良い時代は終わりつつある
投資家や株主も最近は、その企業を応援したいから株を買うというケースも増えつつあるそうです。
一方で、社会的責任を果たさない、経営者が尊敬できないといった理由から、企業が避難を浴びて、結果的に市場から見放されるケースもあります。
2001年に破産法を申請し、倒産したアメリカのエネルギー関連の企業があります。
損失を隠した疑惑で、株価の暴落を招き、市場から支持されず、最後は倒産に追い込まれました。
こうした状況を考慮すれば、企業は利益を出すことで金銭的に報いされいれば株主は満足するという前提は、成立しなくなってきていると言えるでしょう。
株主もリターンを金銭的なものだけでなく、無形の価値や経験を求める傾向があります。
企業のCSR活動が注目される近年では、環境にやさしい製品を作っている、社会貢献に力をいれているということが、十分に出資する理由になり得るのです。
売上アップにつながった一例
2007年から飲料水ボルビックの「ワンリッター for テンリッター」というキャンペーンを見てみましょう。
これは、製品の売上の一文をアフリカで飲料水を確保するための井戸づくりやそのメンテナンスのために寄付するという取り組みです。
あなたの買ったその水が、アフリカの人達の水確保につながるという、製品と顧客、コミュニティのつながりをシンプルに示したわかりやすいストーリーは消費者の記憶に残りやすく、ブログなど各メディアを含む口コミで広がり、売上を34%も伸ばしたようです。2007年7、8月と比較。
人の役に立ちたい、誰かの助けになりたい、という社員の思い、「企業として住みやすい世の中を作る一端を担う」という企業のビジョンが多くの人に共感を生んだのではないでしょうか。
人材採用にも貢献
給料や出世よりも・・・?
近年、こんな若者が増えてきています。
「今の会社での仕事はあくまでも経験を積み、スキルを身に付けるため。本当にやりたいことは別にあり、時期が来たら会社を辞めて取り組むつもりです。」
「難関の面接をくぐり抜け就職した会社ではあるが、正直、会社が何をしたいのか?自分は何のために仕事をしているのか?見えてこない」
彼らは日本の未来や将来を担う人材にも関わらず、「何のためにこの仕事をしているのか?」見えないために、持てる能力を十分に発揮できていないのです。
昔とは違った働く目的を持つ人が増えてきたのではないでしょうか。
社会問題に取り組む企業
アフリカにいくと、ササカワという言葉を耳にするようです。
笹川アフリカ財団が小規模農家のために、何十年と教育や技術提供を行ってきた結果、小さな村の人達にも名前が憶えられて、長く愛するファンを作ったそうです。
他にも住友化学は、アフリカの大きな問題であるマラリアを予防する防虫蚊帳を作っています。
タンザニアの地元企業と提携し、専用の工場を建設し、これを生産しています。
マラリア予防だけでなく、現地の雇用を生み出してもいるのです。
こうした取り組みが実を結び、マラリアの罹患率(りかんりつ)は減少し、住友化学のファンがたくさんできたそうです。
これがもし、あなたが勤める会社だったらどうでしょうか?あなたの会社だったらどうでしょうか?
企業として社会問題に取り組むことは、結果として自社に恩恵をもたらすのではないでしょうか。
参考文献
駒崎弘樹 「社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門」株式会社PHP研究所 2016年
小暮真久 「社会をよりよくしてお金も稼げるしくみのつくりかた」ダイヤモンド社 2012年